昼時の田舎道で、ビニール袋とトングを手に歩く男性としばしばすれ違う。ネクタイ姿からして近くの職場にお勤めか。食事後にウオーキングをしながら道端のごみを拾うのを習慣にしているらしい▼地域では多くの人が湖や川、道路の沿線など公共の場でごみ拾いや清掃に汗している。定例の社会貢献活動にしている団体、企業も多く、環境美化の意識が市民の間に広がっている。昨秋は、諏訪建設労働組合の役員たちが初めて諏訪湖畔でごみ拾いに取り組んだ▼組合員の多くが一人親方だから、これまで日々請け負った工事作業をこなすのが精いっぱいできたが、地域の一員としても貢献を-と繰り出した。ごみを拾う目線で見る諏訪湖は、「初めて見る風景のようで新鮮」と役員たち。仲間と語らって心も洗われたと笑う▼そうした人たちに倣って、せめて目についたごみは拾おうと努めている。顧みれば子どもの頃に「落ちているごみは拾う」としつけられたはず。いつの間に忘れてしまったか。いや、心の隅っこにはある。見て見ぬふりをすることに罪悪感を覚えなくなっただけだ▼メジャーリーグの大谷翔平選手がプレー中もごみを拾う姿が称賛されている。報道によれば彼にとって「運を拾う」行いで、学生時代からの実践だそう。日々の暮らしに追われがちでも、ちょっと社会を思いやれたらすてきだ。再びのスタートも新年はふさわしい。
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