本紙1月28日付の統合版2面、上伊那版6面に載った写真はショッキングな一枚だった。わなに掛かったシカをツキノワグマが襲っている。生きた成獣のシカを捕食しようとしているのだ▼東京農工大の小池伸介教授などの研究チームが昨年5月、栃木県日光市の山林で撮影に成功したという。ツキノワグマはヒグマなどに比べてどう猛ではなく、食べ物は木の実などが中心というイメージを持っていただけになおのこと、野生の生々しさに圧倒される▼シカは、わなとクマの二重苦に直面したことに戸惑っているのだろうか。それともクマに食べられるという、わが身にこれから起こる事態に観念しているのだろうか。写し出された光景は、自然界で生きる物の弱肉強食の厳しさを突き付けている▼こちらを威嚇するかのようなクマの不気味さと哀れなシカの姿を見ると、人の社会は強い者が弱い者を犠牲にして栄える意味合いの弱肉強食ではない世界であってほしいと望む。強者が弱者に手を差し伸べ、一人ひとりをみんなが支える社会。そんな優しさを願う▼厚生労働省の発表によると、昨年1年間で527人の小中高生が自殺し、1980年以降で最多となった。生きていくことは時に厳しく、つらいが、人生には楽しさや喜びもあるはず。追い込まれている子どもたちが孤立することなく、周りに心を開き、苦悩を打ち明けられる環境が必要だと思う。
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