2025年3月8日付

2025/03/08 07:59
八面観

朝、目覚めるとずいぶん体が重い。何だか腕や腰に鈍い痛みを感じる。はて。身に覚えは│あった。どうやら2日前の雪かきが原因のようだ。筋肉痛の遅れに記憶すら追いつかず、情けなさに自嘲して布団からはい出る▼3~5日にかけて中南信地方でもまとまった雪が降った。今冬は北陸や東北の日本海側で災害級の降雪を記録したけれど、こちらではシーズン初めての本格的な雪かきに追われた人も多いだろう。急に訪れた節々の痛みの原因が分からない…なんて人もいたりして▼豪雪地帯に暮らす方々には申し訳ない気持ちもあるが、雪かきが必要なほどの降雪に「春近し」を思う。信州では南岸低気圧の影響で降る重く湿った雪を「カミ雪」と呼ぶ。冬型の気圧配置が緩んだ証拠だ。春を招く雪だと思えば、スコップを握る手にも力が入る▼からからに乾いた太平洋側の大地にとっても天の恵みだったに違いない。大規模山林火災に見舞われた岩手県大船渡市では、延焼を食い止める効果があったという。降水量の少なさは野菜高騰の一因でもあるだけに、今回のお湿りが文字通り呼び水になったらいい▼〈3月はライオンのようにやってきて子羊のように去っていく〉とは英国の有名なことわざだ。ぽかぽか陽気からのカミ雪、そして再び放射冷却の凍える寒さ。月初めは荒ぶる獅子のように落ち着かないが、子羊を思わせる穏やかな春もきっと近い。

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