県内各地を取材で飛び回っていると、あちらこちらで矢崎牧廣の風景画に出合う。その名前を見つけるたびに足を止める。矢崎は絵を描き、その絵を自ら売って家族を養った。絵を売ること以外に何の収入も持たず、信州の自然を愛し「一筋の道」を歩いた洋画家だった▼矢崎は1905年に永明村(現茅野市)の農家に生まれた。小学校高等科を卒業後、家庭の事情で進学を断念し、農閑期に油絵を描き始める。夏のある日、田んぼの草を取っていると、友人たちが楽しそうに登校していく。矢崎少年は「こんなことをして生涯を終わりたくない。必ず自らの道を切り開いてやるぞ」と誓う▼ほどなく1枚の油絵を携えて上京する。訪問先は洋画家の林武。林はその絵を褒めて励ました。矢崎は中央画壇で頭角を現すが、生活は苦しく戦争もあって上京と帰郷を繰り返す▼それでも時代に流されず、「常緑樹」のように制作を続け、矢崎牧廣という画家として生きた。林は矢崎に送った手紙で「私たちは強く生きよう。死なないものを、つかむまでは」とねぎらっている▼茅野市美術館で矢崎の生誕120周年に合わせた作品展が開催中だ。林に最初に見せた油絵「信州風景」も展示されている。上川から蓼科山を望む8号の風景画だ。絵を売って生きられるほど人生は自由だが、重要なのはお金ではない。自分の仕事に誠実か。そんな覚悟を問う1枚である。
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