2025年5月2日付

2025/05/02 08:00
八面観

世界遺産の「仁徳天皇陵(大山古墳)」(堺市)は日本最大の前方後円墳として有名。上空からでなければ分からないにもかかわらず、独特の形状をかくも美しく造り上げた技術者たちの努力と熱意に敬服する▼仁徳天皇で有名なのは「民のかまど」の逸話。高い山からまちを見下ろした天皇は民家から炊飯のための煙が出ていないのを見て民の生活の疲弊に気付き、3年間税を免除した。3年後、再びまちを見下ろし、民家から立ち上る炊飯の煙を確認して民が富んだことを我が事として喜ばれた▼仁徳天皇の仁政にあやかってか、夏の参院選を前に各党が相次ぎ減税策を打ち出している。最大野党の立憲民主党は公約に食料品の消費税ゼロ%を盛り込む方針。野田佳彦代表は会見でかまどの煙を例に挙げた。一方で財源の検討はこれからという▼物価高は民の生活を直撃し、主食のコメは政府による備蓄米放出の決断が遅きに失し、いまだに価格が安定しない。賃金増の恩恵は大型連休を海外で過ごす一握りの層に偏る。それでも目先の選挙をにらんだ財源根拠なき減税の競い合いには不安を覚える▼仁徳天皇の逸話に話を戻せば税を免除した3年間、そのしわ寄せは宮中が引き受けた。自身も衣服や履物は破れるまで使い、宮殿の雨漏りも修理しなかった。翻って現代の減税論だが、そのしわ寄せは為政者の我慢では引き受けきれない。背負うのは誰か。

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