2025年5月5日付

2025/05/05 08:00
八面観

まとまった休日が取れるとふるさととの距離が縮まる。普段離れて暮らす家族が帰省して水入らずのひと時を楽しむ人もいるだろう。触れ合いに心温めている最中に水を差して恐縮ながら、お墓の話▼都会に住む子どもたちが郷里で親の葬式をし、菩提寺にある代々の墓に遺骨を納めることにした。いざ納骨堂を開くため拝み石を動かそうとしたものの、女手ばかりのうえに久しぶり過ぎてびくともしない。立ち会った住職が大汗をかきつつようやく開いて納めた▼さて読経を、と思ったら今度は線香の用意がない。住職がまた汗をかきかき急いで寺に帰り、香を手に戻ると、遺族たちが申し訳なさそうに「お墓を間違えました」と言う。「私もだが、仏様もさぞびっくりしただろう」とご住職。暑さが冷や汗に変わったそうだ▼墓参の機会がほとんどないから間違えるのも仕方なし。それでも墓に納めるだけいいのかもしれない。近頃は遺骨を乗り物内や公共施設のトイレに「忘れ」たり、引っ越し時に捨て置き去ったりする人がいるそうだ。墓を持たず、供養の仕方に困っている声も聞く▼片や墓地では無縁仏が増え、寺院がおいそれと片づけられずにお手上げ状態という。ちなみに「〇家之墓」と刻んだのは明治期の土地不足からだそうで、葬り方は実は時代で変わっている。今や元気なうちに墓の話をしても決してバチ当たりではない時世になった。

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