2025年5月6日付

2025/05/06 08:00
八面観

学校の新学期が始まって1カ月ほど。この時期の”一大イベント”といえば家庭訪問だった。何か悪い事をしたわけでもないのに先生が家に来る。その緊張感は今でも忘れられない▼この日は家中が何となくそわそわ。母親は座敷をきれいに掃除し、お茶を用意。特別日課で少し早く学校から帰ると、ドキドキしながら玄関先で先生を待つ。到着したら家の中へ案内。どんな話をしたのか記憶にないが、ひとしきり話をして次の家へ向かう先生を見送る。ようやく緊張感から解放される▼ベネッセ教育情報サイトによれば家庭訪問の目的は「家庭環境を知る」「保護者とゆっくり話ができる」「家の場所を把握して周りの状況も確認できる」など。ただ、近年はその形も変化し、玄関先で済ませる学校も出てきた。学校によっては玄関訪問、家庭確認、家庭巡回などと呼ばれているようだ▼背景にはプライバシーを重視する考え方や保護者の負担軽減といった事情があるという。コロナ禍で加速した側面もあるようだ。家を見て回るだけなら保護者が不在でもできるし、仕事を休んで家を掃除したり、お茶を用意したりする必要はない。これも時代の流れなのだろう▼せわしい世の中。家庭訪問の是非はともかく、子どもの頃はもう少しゆっくり時間が流れていたように感じる。夕空を見つめながら先生の到着を待った。そんなおおらかな時間が懐かしく思える。

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