伊那市排尿予測装置実証実験 外出意欲が向上

尿のたまり具合を計測する装置と排尿のタイミングを知らせるタブレット端末
身体に装着する小型の装置で排尿のタイミングを予測してトイレの不安を解消し、市民の健康や生活の質の向上を目指す伊那市の「ウェルビーイング実証事業」で、市が昨年度初めて行った実証実験で装置を使った市民モニターの7割以上が「外出意欲が向上した」と効果を実感していることが分かった。これを受けて市は2年目となる今年度、事業内容を拡充。モニターの募集人数を100人に広げるとともに、実証期間も延長し、トイレの心配から外出を控える高齢者らの支援を強化する。
実証実験は、トイレが近くて外出をためらう高齢者や、尿意を感じないなどの不安を抱える人を対象にモニターを募集し、昨年度は18人が参加した。2週間から1カ月間程度、無料で貸し出す装置を付けてもらい、排尿のタイミングを事前に把握することで、トイレの不安が減り、外出への意欲や生活の質が向上するか検証した。
実証実験の前後で行ったアンケートでは、回答があったモニターのうち7割以上が外出意欲が向上したと回答。約3割がトイレの不安感や、生活の質が損なわれている感覚が軽減したと答えた。「長時間バスに乗れるようになった」「以前は尿意がなくても何度もトイレに行っていたが、(装置により)トイレの回数を減らすことができた」との声もあった。
効果が見えてきたことを受け、今年度は募集人数を前年度の20人から100人に拡大し、対象の年齢制限を撤廃。要支援認定者の応募も可能にした。さらに、昨年度は「短期間に連続して装置を付ける負担感があった」との声を受け、実証期間を今月から来年2月までとした。
貸し出す装置は、ベンチャー企業のトリプル・ダブリュー・ジャパン(東京都)が提供する「DFree(ディー・フリー)」。小型で重さは26グラム。装着シートで下腹部に貼り、超音波センサーでぼうこうの尿のたまり具合を計測する。タブレット端末などを通じて、排尿のタイミングを知らせる。
市は事業への積極的な参加を促すため、13、14日を皮切りに月1回程度説明会を開く。両日は伊那公民館で午前10時~午後6時、都合が付く時間に来館すれば説明に応じる。参加無料で予約不要。実証実験とは別に1日限定で装着できる体験も始める。
市は引き続き効果を検証し、本格的な事業化を検討する方針。市企画政策課新産業技術推進係の大塚弘志さん(31)は「排尿に関わるトラブルは精神的ダメージが大きい。不安が解消されれば、心も明るくなってくる。生活をより良いものにするために装置を活用していただければ」と呼び掛けている。
問い合わせやモニターの申し込みは同社(電話0120・587・528)へ。