高遠の寒晒蕎麦 新宿のそば店へ提供

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15日から提供を始める暑中信州寒晒蕎麦をPRする山根健司さん。今年は新宿のそば店でも提供する

伊那市高遠町の高遠そば組合は、江戸時代に高遠藩内藤家が将軍家に献上した「暑中信州寒晒蕎麦(かんざらしそば)」を、新たに東京都新宿区のそば店へ提供する。同組合店舗で毎年この時期に振る舞っている寒晒蕎麦を市外で提供するのは初めて。同市の友好都市でもある内藤家ゆかりの新宿で、寒晒蕎麦の元祖とも言える歴史を持つ特産品の魅力を広くPRしたい考えだ。高遠町の7店舗でも例年通り、15日から提供を始める。

寒晒蕎麦は、将軍家への献上が1722年に始まって昨年で300年。その伝統製法を再現してソバの実を厳寒の1月に同市長谷の粟沢川の清流に浸し、その後、規定の水分量になるまで日光と寒風にさらして独特の甘みや食感を引き出す。

新宿区は現在の新宿御苑一帯が内藤家の下屋敷だったことなどが縁で旧高遠町時代に交流が始まった。そんな高遠ゆかりの地で新たに寒晒蕎麦の提供を始めるのは「蕎麦おさめ」。以前から伊那市の在来種ソバ「入野谷在来そば」を扱っていたこともあって実現し、来年以降も継続して提供していく予定という。

組合によると、寒晒蕎麦の生産は全国約30カ所で行われているが、献上品としての記録が残るのは高遠町と茅野市のみ。茅野では高遠の後に献上が始まったことから「高遠が元祖と考えられる」。ただ、高遠町では現在の形で生産が復活したのは10年ほど前で、以前から盛んだった東北地方などの産地と比べて知名度が低い現状があるという。

同組合長で高遠町のそば店「壱刻」店主の山根健司さん(57)は、新宿へ提供を広げることで「そばや高遠の歴史をひもときながら味わっていただき、産地にも足を運んでもらえるようになれば」と期待。伝統製法に触れる体験ツアーや、市西部にも生産を広げる構想があるといい「伊那市全体を巻き込みながら全国に魅力を発信したい」と意気込む。

高遠町の7店舗での提供は15日から1週間程度の予定。無くなり次第終了する。組合による昔ながらの方法や各店独自の製粉のほか、もりそば(1200円)を基本に店ごと提供の仕方が異なる。

暑中信州寒晒蕎麦を提供するそば店は次の通り。

壱刻、ますや、華留運、紅さくら、七めん亭、紅葉軒、きし野

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