神宮寺の丸太造りの砂防施設 信大助教ら視察

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100年前から受け継ぐ丸太の砂防施設「棚入れ」を調べる信州大学の福山泰治郎助教(中央)と学生たち

諏訪市中洲の神宮寺生産森林組合(金子修平組合長)が100年前から受け継ぐ丸太造りの砂防施設「棚入れ」について、信州大学農学部の福山泰治郎助教(流域保全学)と学生が21日、初めて現地を視察した。福山助教は「見たことがない。非常に珍しい」と語り、土砂と水を分離する棚入れの効果とともに「地域の力で維持管理している貴重な例」としている。
 同組合は組合員166戸で構成し、守屋山一帯の山林を管理している。隣接する茅野市高部の下馬沢川で2021年9月に起きた土石流災害を目の当たりにし、「地域を守るために自分たちのできることをしよう」と、区内5河川の現状と危険度を専門家に依頼して調査し、今年5月に説明会を開いた。

視察は、同組合の守屋幹彦組合長が渓流調査を担当した地質コンサルタントの加藤真彰さんを通じて信州大学農学部(南箕輪村)を訪れたのがきっかけ。森林づくりへの思いを聞き、棚入れに興味を持った教授2人、学生3人が神宮寺区を訪れた。

棚入れは、現地で調達できる倒木などを使って造る砂防施設。まず太い丸太を川に渡し、その上に丸太をすのこ状に並べる。上流側から流れてきた土砂はすのこ部分で止まり、水だけが抜けて流れていく仕組みだ。同組合によると、神宮寺区内5河川のうち4河川に各3~6基設置されているという。

茅野市境の西沢川支流では3基の棚入れを視察し、福山助教と学生たちは丸太の太さや本数、樹種、すのこ部分の傾斜、河川の状況を記録していた。福山助教は「水と土砂を分けることで土石流の勢いをそぐことができる。(すのこ部分の)傾斜は渓流の半分ほどで河床を削る力も弱まる。自前で造ったことがすごい」と語り、研究のテーマや教育の題材としての可能性も指摘した。
 
組合は年1回、棚入れの管理作業を行っており、今後は学生に体験してもらう機会を提供したい考え。視察には金子組合長と守屋副組合長、広報担当の藤森靖明さんが同行した。金子組合長は「集中的に雨が降り、いつここで災害が起こるか分からない。先輩方から代々受け継いできた棚入れの有効性が分かってきた。みんなで大切に伝えていきたい」と話していた。

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