食で地域活性化を 七めんビストロ瀬一梵開店

木をふんだんに使った「瀬一梵」店内で、左から久保田將寛さん、藤沢宗子さん、久保田正視さん、久保田香奈枝さん
伊那市高遠町長藤で手打ちそば・古民家カフェ「七めん亭」を営む久保田將寛さん(34)は、昨年暮れに閉店した同町藤沢の農家レストラン「こかげ」の建物で、7月から信州高遠藤沢郷七めんビストロ「瀬一梵」の営業を始めた。パスタをソースにつけて味わう「つけパスタ」などを提供する。「地域を元気にしたい」とレストランを開業した農家の女性たちの思いを受け継ぎ、地域再生の力になりたいと意気込む。
■農家レストラン「こかげ」の建物
「こかげ」は地元で農業を営む藤沢宗子さん(74)が、過疎化に負けず、食で藤沢地区の魅力を発信したい―と、かつて寒天工場だった建物を改修して2012年に開店した。賛同した地域の女性たちも運営に携わり、地元の野菜や川魚などを使った”農家の家庭料理”を提供。16年から始めた「百姓と職人市」も毎年多くの人を集め、店は地域づくりの拠点になった。
10年を目標に頑張ってきたという藤沢さん。運営メンバーの高齢化もあって昨年閉店を決意したが「このまま閉めるのは忍びない。どなたかに思いを継いでもらえたら」と考え、不動産会社に相談。複数引き合いがある中で、譲渡先に決まったのが久保田さんだった。
かつて下伊那郡平谷村で両親が営んでいたレストラン「瀬一梵」を復活させようと物件探しを進めていた久保田さん。不動産会社の紹介で閉店前の「こかげ」を初めて訪れたところ、木をふんだんに使った建物の雰囲気や周囲の自然環境に一目ぼれして購入を決意。藤沢さんも「大勢人を呼び込んでいる七めん亭さんなら」と快諾し、今年1月に店を譲渡した。

看板メニューの「定番つけパスタ」セット。2種のソースで“味変”ができる。そば粉のガレットとサラダも付いてボリューム満点
■“味変”できる「つけパスタ」
七めんビストロ「瀬一梵」では、久保田さんの父親、正視さん(59)と母親の香奈枝さん(61)が調理と接客を担当し、年内は妹の内田莉奈さん(31)がサポートする。店名は「おいしい」を意味するフランス語「セボン」の当て字。平谷村で営んでいた店の名前を受け継ぎ、家族の思いを込めた。建物は「こかげ」時代のままで手を加えず、洋画のチラシなどを飾って雰囲気を変えた。
提供する料理は「定番つけパスタ」(税込1700円)と「本日のパスタ」(同)、「夏野菜のカレー」(同1500円)の3品目で、それぞれにそば粉のガレットとサラダが付く。中でも「つけパスタ」はチーズトマトと和風カルボナーラの2種類のソースに太めの麺を絡めて味わう。はしを使うので食べやすく、”味変”できるのが魅力だ。「この辺では見掛けないパスタなので、看板メニューになるのでは」と久保田さん。
■使う野菜は全て地元産
料理に使う野菜は全て地元産。藤沢さんも無農薬野菜を提供する。「たくさん人が来ることを期待します」と藤沢さん。久保田さんは「当店しかない味で人を呼び込み、地域の活性化や再生の役に立ちたい。お客さまに愛される店になれば」と話している。
瀬一梵は火~金曜日の午前11時30分~午後2時に営業。11日と15~18日は予約制。予約、問い合わせは瀬一梵(電話0265・96・1831)か七めん亭(同94・3517)へ。