芦部憲法学の起点、幻の論考 駒ケ根市に寄贈

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伊藤祐三市長に「伊那春秋第4号」を贈る(左から)下島大輔さん、酒井茂会長、岩崎靖事務局長

伊那北高校(伊那市)同窓会は20日、戦後日本を代表する憲法学者、芦部信喜(1923―99年)=駒ケ根市出身=が23歳の時、地元の文化人と共に編集した冊子「伊那春秋第4号」を同市に寄贈した。冊子は「芦部憲法学の起点となる宣明」と評された芦部本人の論考「新憲法とわれらの覚悟」を収めた一冊。今後、市立図書館で保管し、デジタルデータなどにして市民が閲覧できるようにする。

「伊那春秋第4号」は54ページで、太平洋戦争へ出征、復員した芦部が、戦後の表現の自由が確保された環境で、教育者や翻訳家、医師、俳人らの文化人を集め、さまざまな思いをつづったガリ版刷りの冊子。1947(昭和22)年に発刊した第4号には、芦部が東京大学復学後、安田講堂で行った当時の東大総長で政治学者、南原繁の演述「新憲法発布」を聞き、「触発されて寄稿したと思われる内容」(法学者の高見勝利氏)の「新憲法とわれらの覚悟」が載っている。

この文書は研究者が長年探したものの、見つからず〝幻の論考〟とされていたが、伊那北高同窓会の岩崎靖事務局長(67)が、駒ケ根市の郷土史家下島大輔さん(85)に尋ねたところ、下島さん宅の土蔵から見つかった。冊子には下島さんの叔父で、英国の歴史家アーノルド・J・トインビーの著書「歴史の研究」を和訳した翻訳家の下島連(むらじ)=享年78=も寄稿しており、土蔵に保管されていたとみられる。冊子は2021年に、下島さんが伊那北高同窓会へ寄贈していた。

駒ケ根市役所で開いた贈呈式には、同窓会の酒井茂会長(71)、岩崎事務局長、下島さんの3人が訪れ、伊藤祐三市長に冊子の原本を手渡した。酒井会長は「冊子は発見後、雑誌などにも取り上げられ、同窓会は論考を世に出す使命を果たした」とし、今後は「芦部先生の出身地駒ケ根で保管し、憲法研究に生かしてほしい」と述べた。

下島さんは「戦後の書きたいことが書ける、言いたいことが言える時代を喜んだのは芦部先生だと思う。多くの人に見てもらいたい」と期待。岩崎事務局長は、最初に冊子を手にした印象を「これが探し求めていた幻の論考と感動した」と振り返り、「憲法学研究の資料として活用してほしい」と話した。

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