伊那市長谷中尾に伝わる市指定無形民俗文化財「中尾歌舞伎」の春季定期公演(中尾歌舞伎保存会主催)が29日、中尾座で開かれた。初舞台の3人を含む役者たちが情感たっぷりに演じ、市内外から集まった観衆を楽しませた。
演目は「奥州安達原三段目 袖萩祭文の段」。舞台は平安時代。父に背いて駆け落ちし、盲目となった袖萩は三味線を抱え、一人娘のお君を連れて父母のもとを訪れる。庭の木戸を隔てて不孝をわびる袖萩―。見どころではたくさんのおひねりが飛び交い、舞台を盛り上げた。
東京から初めて訪れた男性(75)は「笑いの多い田舎芝居だと思っていたが、予想以上に洗練されていて心を打たれた。聴衆と演者の距離が近く、おひねりも投げられて楽しめた」と話していた。
保存会の中村徳彦代表はあいさつで、会場に飾られた「慶応元年 丑歳」と記された引き幕(レプリカ)を紹介しながら江戸時代から続く中尾歌舞伎の歴史を改めて伝え「次の世代に引き継いでいくのが役割だと思っている」と決意を新たにしていた。
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