2024年4月25日付

2024/04/25 06:00
八面観

「実物大ガンダム公開終了」。3月末にこんなニュースが伝えられた。人気アニメ「機動戦士ガンダム」の実物大模型で、アニメ放送開始40周年を記念したプロジェクトの一環で横浜市に展示されていた▼ファーストガンダムと呼ばれ今も続くシリーズの第1作に登場する人型兵器モビルスーツの主役機である。ロボットアニメながらリアリティーを追求しリアルロボットと呼ばれるジャンルの原点となった記念碑的作品である▼その登場人物の一人、ランバ・ラルはいかにもたたき上げの軍人だが、いわば中間管理職である。部下からの信頼は厚い。ある時、彼は独裁者一族から仇討ちを命じられる。「個人的な恨み」による作戦であることを理解しつつ、「わしの出世は、部下たちの生活の安定につながる」と引き受ける▼子どもの頃は見過ごしていたが、大人になってから見ると心に響くエピソードである。相手の反撃で多くの兵力を失った彼は肉弾戦に打って出る。だが悲壮感はない。それどころか「この風、この肌触りこそ戦争よ」と言い放つ。現場で生きてきた人間の言葉なのだろう▼結局彼は非業の最期を遂げるが、同年代となった今、その生きざまには少なからず魅力を感じる。年齢を重ねれば組織と個人のはざまで葛藤が生まれてくることもあろう。人生100年時代。後半生をどう自分らしく生きるか。彼の言葉をかみしめる昨今である。

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