旧渡辺家住宅の屋根で行われているカヤのふき替え作業

旧渡辺家住宅のかやぶき屋根 33年ぶりふき替え

2024/05/20 06:00
社会

岡谷市長地柴宮にある県宝「旧渡辺家住宅」で、かやぶき屋根のふき替え作業が始まった。14年前に終えた北面以外に施す大規模なふき替えは、1991年の解体復元工事以来、33年ぶり。同住宅を管理する市教育委員会が文化財保存事業として進め、6月には市民向けの見学会を計画。地元に残る貴重な文化遺産を守るとともに、ふき替えの伝統技術を多くの人に見てもらう機会にする。

 

旧渡辺家住宅は、高島藩に仕えた武士の屋敷。18世紀中ごろの建築とされ、19世紀半ばに改築された。座敷に中床を設けるなど武家屋敷の特徴が見られる。明治以降に渡辺家は3人の大臣を輩出。渡辺千秋は宮内大臣、弟の国武は大蔵大臣と逓信大臣、千秋の三男の千冬は司法大臣を務めた。

 

ふき替える屋根の面積は約149平方メートル。北面については傷んだカヤを抜き、新しく差し込む「差し茅(がや)」による修繕を行う。工事費は4125万円。北野建設(長野市)が請け負い、専門業者「茅葺信州」(伊那市)が施工する。カヤは伊那市内で採取された約2500束(重さ約9.3トン)を使う。

 

同住宅では、40代の職人4人が朝8時から連日作業。足場を組んで高さ8メートルほどの屋根に上がり、古いカヤを取り除いてから急斜面に新しいカヤを並べ、ふき替えている。

 

職人の香川正和さん(44)は「日当たりが良い上に、いろりで燻蒸(くんじょう)されているため虫やコケもなく、きれいに保たれている」と感心。「気候にもよるが、これなら修繕しながらまた30年近くは持つ」と話していた。

 

作業はカヤと棟木を取り付け、6月中旬ごろからカヤの表面を刈り込み、仕上げていく流れ。屋根以外の修繕工事もあるため、9月まで休館が続くという。

 

市教委によると、市内に残るかやぶき屋根は初代片倉兼太郎の生家(川岸上)、今井十五社神社の舞屋(神明町)、常福寺(長地梨久保)などがある。

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