太平洋戦争末期、上伊那地方へ疎開した陸軍の秘密機関「登戸研究所」を地元の子どもたちに伝えていこうと、研究所を調べている住民有志の登戸研究所調査研究会(駒ケ根市)が、小中学生向け学習冊子を作った。研究所について分かりやすく解説するとともに、爆弾作りに動員された生徒の証言なども掲載。追体験やフィールドワークしながら学べるよう工夫した。同会は「古里の歴史から平和を考えてほしい」としている。
登戸研究所は戦時中、川崎市でスパイ活動や破壊工作を秘密裏に研究。戦況悪化に伴う本土決戦に備え1945年に上伊那を中心に疎開し、缶詰爆弾などを製造したとされる。2018年に発足した同会では実態解明を進めていて、認知度が低い研究所の歴史を次世代に引き継ぐ平和教育の一環で冊子も作った。
小学生用と中学生用をそれぞれ作成。学習の負担にならないようA4判8ページに内容を集約した。易しい記述を心掛け、用語解説を入れて研究所や戦争について解説。子どもたちも動員により爆弾を作ったり、毒入りのチョコレートを誤食したりした談話や証言を紹介する。
連合軍の上陸を想定し本土決戦に備えたことや、終戦時に証拠隠滅のため研究所の資料が廃棄された経過も説明。なぜ上伊那へ疎開したか、なぜ隠さなければならなかったのか、小中学生に考えてもらえるよう工夫した。爆弾製造や実験で爆破した場所を印した駒ケ根市内の略図も載せて、フィールドワークに活用できるようにしている。
冊子はメンバー5人を中心に昨年4月から編集を進め、教職員の助言を受けてこの春に完成させた。駒ケ根市内の小中学校全7校に計1000部を配布、授業で利用してもらう。活用事例を参考に改訂し、来年度も配布する。
「同年代の子どもが戦争に使役された事実に触れる学習の意義は大きい」と同会事務局次長の久保田逸巳さん(67)。会では今秋を目標に、疎開先の一つだった市民俗資料館(旧中沢国民学校)に登戸研究所平和資料館を開設予定。常設展示を設ける計画で、同館での平和学習にも冊子が役立てばと期待する。
希望者には冊子の提供に応じる。問い合わせは久保田さん(電話090・4159・6146)へ。
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