2日午後4時30分ごろ、箕輪町下古田の深沢川近くの農道で、散歩していた近くに住む無職の男性(74)が体長約1メートルの熊に襲われた。伊那署によると、左の顔面や太ももなどにひっかき傷を負う軽傷のもよう。熊は深沢川方面の林に降りていき、3日午後6時現在、いまだ見つかっていない。同日朝夕の登下校時には町や町猟友会、同署などがパトロールで警戒を強めるものの、近隣住民から不安の声が上がっている。
現場周辺には田んぼが広がり、約200メートル先には民家も立ち並ぶ。近くの70代女性はここ数年で自宅近隣の熊の出没頻度が増えたといい「最近はテレビで熊に襲われたという怖い話をよく聞く。近くで出たと聞くと心配。今日と明日は(下校時に)小学生の孫を迎えに行く」と話した。
町みどりの戦略課によると、町内で熊による人身被害は少なくともここ10年は発生していなかった。目撃件数は年間10件ほどだが、深沢川沿いは林が続いて熊の通り道になっており、毎年のように目撃情報がある。5月31日には現場から南西に約500メートル離れた深沢橋近くで親子2頭の熊が目撃され、町は町情報発信アプリ「みのわメイト」で注意喚起していた。男性に軽傷を負わせた熊と同一の個体かは分かっていない。
3日に町は周辺に注意を促す看板を5カ所、カメラを2カ所に設置。4日には二つのおりを仕掛けて、登下校時のパトロールを続ける予定だ。現場から約1キロ離れた箕輪西小学校は7日まで保護者に児童を送迎するよう依頼した。出没情報のあった場所には近づかず、田畑や家の近くでも鈴や笛、ラジオなど音の出る物を身に着け、2人以上で行動するよう呼び掛けている。
現場近くの下古田区には100世帯、300人が暮らしている。深沢川沿いで目撃情報が多く、小平惠一区長(73)は「熊がいることは分かっていた」と話す。近隣区から散歩で訪れる人もいることから、「改めて注意喚起する必要がある」とした。ただ、各戸を巡回する回覧板は手渡しのため情報伝達の速度に課題が残るという。「まずは熊のすみかとなるやぶを取り払って再発防止を図りたい」と話していた。
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