中アのライチョウ 野生復帰のメスが自然繁殖

LINEで送る
Pocket

野生復帰したメスの個体とヒナたち(環境省提供、2日撮影)

中央アルプスで国特別天然記念物ニホンライチョウの個体数を増やす「復活作戦」に取り組む環境省は7日、昨夏に動物園から野生復帰させたメス1羽が繁殖し、ヒナ6羽がふ化したと発表した。飼育下における繁殖の中で生まれた個体による自然繁殖は初めて。環境省はこの家族を含む4家族(メス4羽とヒナ21羽)をケージ保護し、約1カ月間ヒナの成長を見守る方針。

復活作戦は、2018年に駒ケ岳でメス1羽が発見されたことから始動した。21年には中アで繁殖した2家族を動物園2園に移送し、飼育下で繁殖させてヒナが野生個体が持つ習性や寄生虫耐性を獲得した状態で野生復帰させるプロジェクトが始まり、22年夏に3家族など22羽を野生復帰させた。同省信越自然環境事務所(長野市)による昨年10月の調査で、野生復帰個体10羽を含む100羽の生存を確認している。

同事務所は4月から今月3日までの調査状況をまとめた。ライチョウは中ア全域で71羽の生存を確認。未発見の個体もいることから個体数は80羽程度となる見込みで、前年の41羽(推定)からほぼ倍増した。繁殖の際に形成する縄張りは宝剣岳より北側で15個、南側で14個の計29個を確認。縄張りの範囲も前年よりも南側にやや拡大し、縄張り数も12個増えている。

今回の調査で 確認できた野生復帰個体数はオス1羽、メス3羽の計4羽。このうち21年に 長野市茶臼山動物園に導入して昨夏に中アに戻ったメス1羽もヒナ5羽とともにケージ保護を行っている。

このほか、県内外の4カ所の動物園と博物館で飼育下での繁殖に取り組んでいる。現地で保護に取り組む小林篤専門官は「ライチョウの個体数は順調に増加している。今夏ふ化したヒナが無事成長できるよう保護に取り組んでいく」とした。

同事務所は中アでのヒナの生存率を高めるため、サルの追い払いや捕食者対策も進めていく。

おすすめ情報

PAGE TOP