中南信で繁殖のアカモズ 絶滅回避へ取り組み

世界で初めて人工ふ化・育すうに成功したアカモズのひな(7月15日撮影、人間環境大学提供)
人間環境大学環境科学部(愛知県岡崎市)は28日、中南信地域のリンゴ果樹園での繁殖が確認されている準絶滅危惧種のアカモズのひな9羽の人工ふ化と人工育すうに成功したと発表した。アカモズの人工ふ化・育すうは世界初の試み。同大の岡久雄二助教は「多くの関係者の熱意があり、成功させることができた。アカモズの絶滅を回避するため、飼育個体の野生復帰も可能性の一つとして研究を進めていきたい」としている。
アカモズはスズメ目モズ科の鳥類。このうち日本で繁殖して東南アジアで越冬する亜種アカモズは、かつては日本各地に生息していたが、環境の変化などにより生息数が激減している。分布域は過去100年間で90%減少し、2022年の調査では主に長野県と北海道で200羽程度の繁殖が確認されるほどにまで減った。絶滅危惧ⅠB類(準絶滅危惧種)にも指定されていて、26年にも地域絶滅すると予測されている。
岡久助教の研究室では、県内の研究保全グループからの相談を受け、今年5月から県内に生息するアカモズのモニタリング調査などを実施。捕食者などにより抱卵を廃棄された卵計29卵を豊橋総合動植物公園(同県豊橋市)に移送して人工ふ化させたひなのほか、繁殖地で保護したひななど計11羽が野生下で巣立ちできる状態まで成長したという。
今後は、この11羽をファウンダー(始祖個体)として、飼育下で繁殖させて飼育個体群の確保し、アカモズの短期的な絶滅の回避を目指すほか、野生化での個体数の増加を図る。