2021年1月16日付

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ポタポタと規則的な落下が途切れ、点滴の終わりを見計らって看護師が片付け始めると、患者は「ぎりぎりまで入れてください」と請う。「皆の善意だものね」と看護師。その液剤は数千人分の血液でできている▼ヒトの血液はけがや手術など医療現場で欠かせない。完治の術がなく、悪化や進行を抑えるために恒常的に血液を必要とする難病患者もいる。それらの血は献血で提供されたものだ。多くの人の思いやりに支えられて生をつなぐ人たちがいる▼昨年来、漫画「鬼滅の刃」の人気が過熱している。鬼に家族を惨殺され、生き残った妹も鬼の血を受けて鬼にされた少年が、悲しみの繰り返しを断ち、妹を人間に戻すために鬼と闘う物語。血塗られた激闘場面はひどく凄惨だが、それを超えて多くの人の琴線に触れた▼少年は鬼に対してさえ思いやり深く、壮絶な訓練に耐え、落命の危機にも諦めず自らを鼓舞し続ける。仲間皆が命をなげうって力を合わせ、後に続く者へ志をつなぎながら闘う姿は新型コロナウイルスの猛威に押される心を奮い立たせてくれた。この血の物語は沈む経済も救ったようだ▼献血も鬼滅も見知らぬ誰かをも大切に思い、身を削ってまで救おうとする心が尊い。今、医療機関は助ける命の順番づけも強いられかねないほど切羽詰まっている。万人が現場に心を寄せ、感染を広げない思いやりを日常で実践する機ではないか。

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