2021年4月11日付

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3年前までは、類いまれな天賦の才能を得た人だと思っていた。競泳の池江璃花子選手のこと。小学生で頭角を現し、大会記録を次々に塗り替えて2018年にはアジア競技大会で6冠を樹立。日本人初の快挙をなす驚異的な泳ぎは神が与えた特別な身体能力ゆえの技と見ていた▼その絶頂期を襲った病魔との闘いは徹底的に心身を打ちのめし、死にひんするほどの苦痛を伴ったという。生き地獄からはい上がって五輪の出場切符をつかんだ胆力は神によるものでは断じてない。ゴールで水から上がれないままむせび泣く姿が物語っていた▼東京五輪に向けて聖火リレーがこの地を走り抜けた。住民は新型コロナウイルスの感染防止を考えると沿道に立っても良いのか悪いのかと惑い気味。ランナーに声援をかけることもできず、遠慮がちに手を振って見守る姿に盛り上がりに欠いた感が否めなかった▼大会の開催自体もいまだ賛否が割れる。招致の当初に掲げた東日本大震災からの復興は、大会でどう反映されるのか見えないまま。主催、運営者の相次ぐ失言やトラブルも泥を塗り重ねている。新型コロナの収束もいまだ見えない▼「努力は裏切らないんだなと思った」。泣き笑う池江さんの言葉はアスリートたちの想像を絶する辛苦と、スポーツ競技の純粋な感動を思い出させてくれた。彼らの命懸けの日々に報いる晴れ舞台の無事開催を願うばかりだ。

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