2016年11月18日付

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「命より大切な仕事はありません」。大手広告代理店電通の新入社員で昨年12月に過労自殺した高橋まつりさんの母・幸美さんが厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」で訴えた。働く―とは何かを改めて見直すきっかけとしたら十分過ぎる一言だ▼同社を含め各地で問題となっている過労自殺。多くの受け止めは本人に共感し同情的だが、中には「仕事に対する認識が甘い」など意識の弱さを指摘する向きもあり、見方はさまざまだ。ただ、過労が原因で自らの命を絶たねばならなかったという事実に変わりはない▼幸美さんはシンポジウムで▽残業時間の削減▽パワハラを許さない企業風土や業務の改善▽ワークシェアや36協定の改革―などを訴えたという。いずれも健全な就労環境を築く上では、ごく当たり前の内容だ。その“当たり前”がないところで悲劇は起こっている▼人類の最初の職業は食料の収集や栽培、狩猟など人が生きていく上で最低限必要な生活活動だった。時代は移り、働く意義も「食べる」のみならず、社会貢献や人生の目標・生きがいなどへと発展した。ただし、そこには「自らの命と引き換えに」は含まれていない▼いくら良い製品を作ろうが企画しようが、命の犠牲の上によるものであっては仕事としての意味をなさない。誰かのため、自分のために「働く」はある。生きていてこそ働く意味も真に生きてくる。

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