其残の楽焼、米に現存 研究者の山田夫妻調査

LINEで送る
Pocket

国内外で高く評価される岩波其残の楽焼。写真は江音寺収蔵の「獅子香炉」と山田昭彦さん、貴子さん夫妻=原村の八ケ岳美術館

幕末から明治初期にかけて活躍した諏訪市出身の俳人、岩波其残(きざん、1815~1894年)の楽焼が、米国ボストン美術館に現存することが分かった。縄文遺跡「大森貝塚」(東京)を発見したエドワード・モース(1838~1925年)の日本陶器コレクションの一部で、其残研究者で血縁のある山田昭彦さん(68)、貴子さん(62)夫妻=同市豊田=が調査を進めている。円熟期の傑作である可能性が極めて高いという。

企画展「岩波其残と画友」を開催中の八ケ岳美術館(原村)は、モースの日本陶器目録を入手し、其残の楽焼が掲載されたページを公開。諏訪市豊田の江音寺で発見された「獅子香炉」や、諏訪大社上社の神宮寺五重塔のくぎ隠しをふたに使った「菓子鉢」(個人蔵)など、国内に残る楽焼を複数展示している。

山田さんは2018年、其残の交友関係を調査研究する中で、俳文学者の矢羽(やば)勝幸さんが編さんした「長野県俳人名大辞典」に其残の作品がボストン美術館に渡っているという記述を見つけた。モースと其残をつないだのは、上諏訪出身で1888年に渡米していた松木文恭で、実家の父松木善右衛門(明喜)に其残の楽焼を送るよう頼んだ。其残は文恭渡米から4、5年後、モースに楽焼の茶入れを送ったことを文章に残しており、最晩年の作品であることは確かという。

モースがボストン美術館に寄贈した日本陶器は5000点余り。其残の楽焼は、丸みを帯びた茶入れと急須、四角い箱、獅子像の4点になる。モースの目録は白黒印刷のため、山田さんは同美術館にカラー写真の提供を求めていて、いずれは渡米し実物を確認したいと願っている。

山田さん夫妻は「其残はただの俳人ではない。妻美智と2人で日本中を旅しながら、俳画や楽焼など味わい深い世界を築いた。多面性、多様性の塊のような人で、モースをはじめ外国の人が認める力量の持ち主。其残の世界を多くの人に知ってほしい」と話している。

八ケ岳美術館の企画展は11日まで。8日午後1時30分から同館で講演会があり、画家五味龍洲の孫でイツミ会長の五味光亮さんが「原村の五味龍洲~岩波其残の周辺画家」と題して話す。

おすすめ情報

PAGE TOP