2016年12月11日付

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米国の詩人アレン・ギンズバーグにかぶれていた友人の勧めで初めてボブ・ディランのレコードを買ったのは大学生のころ。ディランは、1950年代に活躍したギンズバーグら新時代の詩人たちとも交流があり、「歌詞が深いんだよ」と解説した友のしたり顔を思い出す▼聞き始めてしばらくは、しゃがれ声が耳ざわりでしかたなかった。半面、歌詞は訳詩を何度も読み返すほど魅了された。不思議なもので、レコードを聴くほどに独特の歌声も心地よく響いてくるようになった。影響されて買ったギターはまるで上達しなかったが…▼アルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」に収録された「風に吹かれて」は何度聴いたことか。争いが終わるまで、どれだけ砲弾が飛び交わねばならないのか―。なぜの問いに対し、「その答えは風に舞っている」と繰り返される。普遍的命題を歌った歌だ▼翻訳家でフォークシンガーの三浦久さん(71)=辰野町=は、留学先の米国で「風に吹かれて」を聴き、衝撃を受けたという。〈その後のぼくの人生はすべてこの歌から始まったと言ってもいい〉と著書に記している。歌の持つ力の大きさを感じずにはいられない▼ノーベル文学賞受賞を機に彼の歌と出合った人もいるのでは。時代を超えても色あせない歌詞はすごい。75歳になった反骨のミュージシャンは変わらず歌い続け、また誰かの支えとなるのだろう。

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