2016年3月12日付

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「春、春」。1942年のちょうど今時分、冷たい牢屋の中で、春の訪れに希望を見いだしながらじっと耐えている青年がいた。後年、信州社会党を支えた元県議の溝上正男さん=伊那市=だ。戦時中、文筆活動などが治安維持法違反に問われ投獄された▼自らの信念によるとはいえ、収監中に妻の出産、弟の戦病死、父の病気が相次ぎ、溝上さんは苦悩する。この年3月19日の日記には「自然は一分の間違いもなく春は冬のあとに廻って来た。(略)青い芽が萌え立っている。春、春」(「風雪のうた」)とある。春の芽吹きに自らを奮い立たせているかのようだ▼東日本大震災の被災地にも、また春がやってきた。岩手県大槌町の高校生たちが、被災した町の変化を定期的に写真撮影する「定点観測」を続けている。津波で流された町並みが少しずつ復興する様子を記録する。今後のまちづくりについても考えていくという▼本紙掲載の記事では、担当の先生が「震災前を思い出して喪失感を覚える生徒もいるが、お互いの心の整理をしながら写真を撮っている」と話していた。生徒の心の立ち直りにもつながる活動だろうか▼生徒たちは長野県を含めた県外の高校を訪ね、報告会を開くなど意欲的だ。3年生は卒業するが活動は下級生が引き継ぐ。思い出すのもつらい大震災。しかし、若い世代はしっかり向き合おうとしている。春は希望の季節でもある。

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