自殺者の減少 社会全体で生きる支援を

LINEで送る
Pocket

昨年1年間の自殺者が22年ぶりに2万2000人を割り込んだ。警察庁のまとめでは、前年に比べて2127人少ない2万1898人(暫定値)で、7年連続で減少した。県内も393人(同)と400人を割り込んだ。自殺を社会問題として捉え、あらゆる角度から対策を講じてきた成果が数字となって表れている。

年間の自殺者数は、金融機関の破綻による倒産や失業者が急増した1998年から増え始め、バブル経済の崩壊を機に14年連続で3万人を超える異常事態が続いていた。だが、3万人を下回った2012年以降は減少が続いている。

県内の自殺者数も金融危機に見舞われた98年ごろから急増した。経済不況による生活苦や雇用への不安が社会に暗い影を落とし、毎年500人前後と高い水準で推移していたが、09年からは減少傾向に転じ、昨年は自殺者数が急増した以前の水準に戻っている。

自殺者が減少してきた最大の要因は、政府が「命を守る政治」の実践を全面に打ち出したことにある。誰もが自殺に追い込まれない社会を目指した取り組みが、国だけでなく県や市町村レベルにまで拡大したことが転機となった。自殺を個人の問題として片付けるのではなく、社会全体が率先して、生きるための支援を行うという意識に変化してきている。

とはいえ、依然として年間の自殺者が2万2000人近くに上るという現実を重く受け止めなければならない。毎日60人が自ら命を絶っている計算だ。原因や動機は千差万別であり、健康への不安や経済問題だったり、仕事に関する悩み、家族や恋人との別れ、進学問題、いじめなどと多岐にわたっていて複雑だ。

働き盛りの自殺者が多いのも気掛かりだ。長時間労働で心身ともに疲弊し、うつ病を発症した末に命を絶ってしまう過労自殺の悲劇を繰り返さないためにも、実効ある働き方改革を急ぐべきだ。

3月は自殺対策強化月間。県では県内10圏域ごとの保健福祉事務所が曜日を定めて「くらしと健康の相談会」(無料)を開催する。失業や倒産、多重債務、家庭問題などについて弁護士が対応し、健康に関する悩みは保健師が相談に応じる。心配ごとや気になることがあったら、一人で悩まず、まずは専門家に相談してみることだ。

おすすめ情報

PAGE TOP