2017年03月10日付

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どう言葉を掛けたらいいのだろう。相手は自分にどんな応接を望むのかと考えてみても、相手の気持ちに添うどころか逆なでてしまいそうだ。がんを患う人やその家族に接する時、いつも胸が詰まる▼そのためらいを見透かすように、患者さんは「がんの苦しみは経験者にしか分からない」と言う。周囲の者は大切な人を襲った病を恐れ、掛ける言葉一つにも迷う。一方、患者本人は心身の苦しさに加えて誰にも心境を理解されない孤独を味わう▼互いを思いやればこそ苦しみを分かち合うこともできず、それぞれが自身と闘っている│そんな状況だろう。今や2人に1人がかかるともいわれる病気なのにケアの体制は十分と言い難い。そこで富士見町の中山靖子さん(75)は、がんについて気軽に語る交流の場「メディカル・カフェ」を開こうと決めた▼2年前、胃がんになり「この苦しさを誰かに話したい」と思ったのがきっかけ。27歳から10年間、膝の腫瘍(しゅよう)で闘病した経験もある。その時、手話と出会い、聴覚障がい者の支援に尽くしてきた。「病の経験を社会に生かしたい」という思いを、今度はがん患者に向ける▼「死を意識してより丁寧に生きようと思った。この病気がいい経験をくれた」と中山さん。がんへの恐れやつらさを吐き出し、隣にうなずいてくれる人がいる。そんなカフェと、中山さんの不屈の精神はきっと多くの人の助けになる。

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