まちのかたち 合併から10年・1 伊那市:基盤整備・財政健全化

LINEで送る
Pocket

「合併がなければ、生活基盤整備と行財政改革の二律背反する取り組みをここまで進めることはできなかった」

伊那市の白鳥孝市長は、合併で得た合併特例債や合併特例交付金などを「有利な財源」とし、合併後の市政運営に不可欠だったと強調する。

合併特例債は元利償還金の70%を国が負担する地方債。合併した自治体が発行でき、同市は2020年度までの発行が可能だ。合併特例交付金は、合併前の旧市町村が受け取るはずだった交付税の合計額が10年間交付される。市はこれらの財源を活用し、小中学校の耐震化や公民館・保育園の建て替え、伊那消防署移転、道路整備などの社会資本整備を積極的に進めてきた。

合併特例債の発行額は16年度事業も含め累計で138億円となる見込み。これまで発行可能額196億円の8割程度としていた自主制限枠を取り払い、今後も環状南線延伸や学校給食施設整備、防災拠点施設建設などへの活用を計画する。

一方、市は合併以降、財政健全化を最重要課題に位置付け、行財政改革を推進。事務統合による効率化や経費節減を図り、06年度に832人だった正規職員数は639人に、保育園は統廃合で24園から20園に減った。

この結果、財政状況は大幅に改善。06年度決算時と今年度決算見込みを比べると、財政健全化の判断指標になる実質公債費比率は20.8%から10.1%に、将来負担比率も197.3%(07年度決算)から39.5%に減少する見通しだ。一般会計の借金残高は396億円から330億円に減り、基金残高は55億円から151億円に増えるとする。

財政状況の改善理由に、市財政課も「必要な事業に有利な財源を充てることができたため、結果的に支出を抑えることができた」と強調する。

ただ、昨年度決算時の実質公債費比率は依然として県内19市の中で駒ケ根市に次ぐ「ワースト2位」。今年度で期限切れを迎える合併特例交付金は来年度から交付額が徐々に減額され、5年後の20年度には今年度より6億円程度少なくなる見通しだ。今後は人口減による税収減、高齢化による扶助費の増加などで財政状況は厳しさを増す。

同課は「収支の均衡を保ち住民福祉の増進を図るためには、地方創生による移住者獲得による税収確保、経費削減など、一層の努力が必要になる」としている。

「平成の大合併」から10年。上伊那地方ではすべての市町村が合併協議に参加したが、結果的には唯一、2006年3月に伊那市と高遠町、長谷村の合併により「新伊那市」が誕生した。目的とされた財政健全化や住民サービス向上、住民自治の確立など、当時期待された「合併効果」は現れているのか。合併を選択しなかった自治体を含め、10年後の現実を検証する。

おすすめ情報

PAGE TOP