2017年12月24日付

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「お兄さんいくつ?」「58です」「若いねえ」。1時間ほどの間に、こんな会話を5回ほど繰り返した。相手は70代のおばあさん。認知症で近時記憶(数分~数時間の新しい記憶)に障がいがあると知っているから、聞かれるたびに内心では「若くはないよな」と思いながら笑って答えた▼総合介護サービス「和が家」が岡谷市湖畔で毎週火曜日に開く「ぐらんまんまカフェ」。取材で訪ねた日は、介護施設の利用者4人が施設の女性スタッフ3人と一緒に、限定30食のお昼の定食を準備していた▼正午の開店後は予約の団体6人、見学を兼ねて食事に来たという上伊那の施設で働く若い女性2人組、諏訪市のテニスサークル仲間などが次々に来店し、約30席の店内は満席だ。しゃれたユニホーム姿で認知症のおばあさんも接客に忙しく立ち働いていた。楽しそうだ▼客のほとんどは複数で訪れていたが、顔見知りの地元の区長がひょっこり1人で来店したので話を聞いてみた。「普段は事務所で持参の弁当だけど、火曜日だけはここに食べに来る。このカフェは応援したいからね」▼昭和を代表する女流作家の有吉佐和子が「恍惚の人」を発表したのは45年前。当時と比べれば福祉施策も施設も充実しているが、有吉が作品を通して示した「人は何のために生きるのか」「誰のために生きるのか」という問いに対する一つの答えが、このカフェにあると感じた。

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