2018年02月04日付

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「太いのり巻きを1本持ってな、その年の恵方に向いて食べるんや。食べ終わるまで絶対に目を開けたり、しゃべったりしたらあかんねん」。学生時代に友が披露した関西の節分のユニークな風習に、地域の多様性を実感した▼今や信州の節分でも店頭に巻きずしが並ぶ。家に居ながらにして見知らぬ土地、国の食や文化が楽しめる時代だ。おまけに材料を買って作るより出来合い品の方が安上がりだったり、おいしかったりする切ない不条理まで生じている▼物と文化の自由な流通は地域間の垣根を低くし、生活の労を軽くしてくれた。ただその陰で、地方の特色ある味や風習が薄れつつあると寂しさも感じる。手間暇を惜しんで簡略、簡便を優先するうちに、土地の人が受け継ぐ知恵や技術を学ぶ機会が減った。地域固有の希少な文化ほど担い手、作り手の不足で消失しやすいのが気がかり▼「これ食べてみてよ」と富士見の名取重治町長が差し出したのは蜂の子のつくだ煮。自ら野山を駆けて蜂を追い、傷だらけになって巣を捕る。「鍋底の調味液がなくなる瞬間が勝負なんだ。すぐ焦げちゃうから」と話が弾む▼このつくだ煮が出来るまでの過程には自然への理解、捕獲の技、調理の工夫などたくさんの経験と生活の力が詰まっている。ふるさとへの愛着も生きる力も、こんなふうに地域に根を張り、額に汗する実体験から生まれ育つものなのだろう。

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