2018年03月11日付

LINEで送る
Pocket

フランスの作家カミュの小説「ペスト」は、まちを襲った病に市民が立ち向かい、解放されるまでを描いている。罪なき多くの人が奪われる不条理は災害にも重なる。復興が進んでも発生前の日常を取り戻すことはかなわず、被災者の悲しみや悔しさが消えることはないだろうが、時間とともに少しでも心の傷が癒えることを願うばかりだ▼7年前のきょう、駒ケ根支局に勤務していた。未曽有の被害を出した東日本大震災。「あっ地震だ」とやや身構える程度の揺れとは明らかに違って、異様さに身がすくんだことを思い出す▼支局長と顔を見合わせ、「これは日本のどこかでとんでもないことが起こっているかもしれない」と。やがてテレビに映し出された津波の猛威に言葉を失うしかなかった▼復興庁によると、今もなお岩手、宮城、福島3県で合わせて3万近い人が応急仮設住宅などで避難生活を送っている。不安定な暮らしの長期化で心の不調を抱える人も多いという。こうしたことを聞くと、平穏無事な日々のありがたさを痛感する。当たり前のことは決して当たり前のことではないのだ▼災害はいつやってくるか分からない。次の瞬間にも非日常に見舞われ、大切な人と引き離されるかもしれない。その時になって悔やむことのないように、家族や周りの人に自分を支えてくれている感謝の思いを普段から伝えておくことが大切ではないだろうか。

おすすめ情報

PAGE TOP