御柱祭を彩る8 「東山田長持保存会」下諏訪町

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下社里曳きを間近に控え、練習に熱気が帯びる東山田長持保存会

下社里曳きを間近に控え、練習に熱気が帯びる東山田長持保存会

「襟に若れん背中に洲●(すわ)と染めた揃(そろ)いで勇み立つ」―。袖を通す男の心意気が長持ち唄にも歌われた濃紺の法被。諏訪大社の供物運びに奉仕した「御用長持」(ごようながもち)の歴史を継ぎ、「境内へ入ることが許された唯一の長持ち」の誇りを持つ。四尋半(よひろはん)(7~8メートル)の伝統を守る太い棹(さお)を含め総重量は230キロ余り。前2人、後ろ1人の3人で担ぎ、その足取りは「重さを感じさせない粋な足さばき」と定評だ。

しかし実際には、体格に恵まれた男性でも簡単には担げない。練習を始めたばかりの頃は、棹が当たる肩が真っ赤に腫(は)れ、次第に黒紫の内出血に変わる。つま先まで神経を通わせ、丁寧な上げ下げを繰り返す足には疲労が蓄積し、腰周りも固まって全身に痛みが走るという。

御柱祭では、長持ちに諏訪大社から受けた錦の旗と、徳川家康の六男、松平忠輝の筆と伝わる「一ノ宮御用」の札を掲げる。東山田にだけ許された御用の証。この重みが男たちを奮い立たせる。

増澤哲会長(60)は「一番大切なのは伝統を守り継ぐこと。しかし、押しつけでは続かない。『受け継ぎ、伝えたい』という気持ちを生む環境をつくることが大事だと思うのです」と話す。幸い東山田には、住民ぐるみの理解と支えが深く根付いている。「一定の年代になったら、当然のごとく長持ちに参加する。親子3代で会員という家もあるほど。新しい住民も歓迎。そんな環境で、地域と伝統を大切にする気持ちが育まれているのではないでしょうか」。

下社里曳(び)きでは3棹を出し、約150人いる会員のうち、20~50代の若手を中心に60人余りが直接の担ぎ手として奉仕する予定だ。

3月は週3回、4月からは週4回と練習量を増やし、現在は重厚な「ギーコ、ギーコ」の音を出す練習にも熱意を注ぐ。担ぎ手の所作がピタリと合った時にだけ出るという音は、1棹でも鳴らすのが難しく、「3棹そろえて」となれば相当の練習が必要という。肩を鍛(きた)えて、体をつくる。所作を覚えて、動きを合わせる。

増澤会長は「大観衆を前に所作を披露し、拍手を浴びると、腹の底から誇らしさがこみ上げてくる。若い会員にぜひそれを体験してほしい」と願う。「分かち合った喜びが、さらに未来への力となるはずだから」。5月5日には、最終調整となる「勢ぞろい」を行う予定だ。

●=さんずいに羽

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