2018年04月03日付

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全体に茶色がかった色彩、ボタンダウンのシャツに緑を基調としたネクタイ、背広の色も茶系である。そして正面を見つめる意志の強さを表す目。20代前半の若者としてはちょっと老け顔か。一枚の油絵に吸い込まれるような引力を感じた▼開館20周年記念展を開いている岡谷市のイルフ童画館で、武井武雄が東京美術学校(現東京芸大)の卒業制作で描いた自画像を初めて見た。武井の油絵として唯一残っている作品という。洋画家を目指した武井には他にも油彩作品があったのだろうが、戦前に描いた多くの童画の原画と同様に、戦時中の東京空襲で焼けてしまった▼その自画像も含めて、記念展では幼少期から青年期の作品も展示されている。5歳の時に描いたという戦国武将、旧制諏訪中学時代の水彩画…。いずれも天性の才能が伝わってくる魅力的な作品ばかりで、後の武井作品とは違う新鮮な感動を覚えた▼童画家という肩書きで語られる武井ではあるが、残された作品からは版画家でもあり、造本芸術家でもあり、優れたデザイナーでもあったことが、「クロニクル(年代記)」と題した記念展で改めて確認できた▼年内にはフランスで武井の画集が出版される計画も進んでいる。ヨーロッパの人々に武井作品がどう受け止められるか。反応次第では作品展開催も現実味を帯びてくる。「童画のまち岡谷」を世界に発信できる日も夢物語ではない。

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