2018年4月28日付

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明治の文豪幸田露伴のひ孫で随筆家の青木奈緒さんが、自著「幸田家のことば」で中学時代の授業風景の一コマを回想している。「猫に餌をやる」と「猫にご飯をあげる」。どちらの表現を身近に感じるか、先生が生徒に問うたという▼結果は、先生は否定した「ご飯をあげる」が優勢だった。当時猫を飼っていたという青木さんはずいぶんと迷ったようだ。いまから40年ほど前の話である。ペットは愛玩ではなく家族である、そんな感覚が広がったのはこの頃ではないかと青木さんは推測している▼祖母の幸田文さんの代から15匹は飼ってきたというから、幸田家の猫好きは相当なもの。自分勝手で強情な「個」の部分を持つ猫の性癖を文さんは「猫根性」と呼び、ときに手を焼いたという。それでも愛くるしくてたまらないのだから、猫の魔性恐るべしである▼業界団体の昨年のペット飼育実態調査で、猫の飼育数が初めて犬のそれを上回った。犬の飼育数の落ち込みには、散歩やしつけなど猫に比べて負担感が大きいといった背景があるようだ。このまま猫ブームが続くとすれば、この差はさらに広がっていくのだろうか▼幸田家に負けず劣らずたくさんの猫を飼い続けてきた筆者は、自由気ままなその生き物に無償の愛情を注ぐ人たちの気持ちがよく理解できる。猫のいない生活は味気ないと思うわたしは、文法上はどうあれ「ご飯をあげる」派ですね。

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