2018年07月12日付

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大工、左官屋、植木屋、襖屋、表具屋と、木造の自宅の保守や修繕で出入りする職人さんたち。一人の仕事が丁寧だと、まるで以心伝心、後を任された異分野の職人にも感染し、指示がなくても、佇まいが一定の感度にそろってくる▼哲学者の鷲田清一さんが著書「おとなの背中」(角川学芸出版)で日本の技術を支えてきた職人の矜持について書いている。矜持=きょうじとは難しい言葉だが、手元の辞典では「自負」「誇り」などと説明されている。自分の能力を信ずればこそ生まれる意識だ▼鷲田さんはこの中で、ある石垣積み工の仕事について民俗学者の宮本常一が伝えた話を紹介している。雑な仕事は次の雑な仕事を生む。だから粗末な仕事はできないと。〈職人のこだわりはじつに未来の職人に宛てられていたのである〉と鷲田さんはつづっている▼大阪北部地震で小学校の壁が倒壊し、下敷きになった女児が亡くなった痛ましい事故を受け、全国の公共施設でブロック塀の緊急点検が行われている。この事故では塀の高さや補強壁がないなど明らかな法令違反が見つかっており、人災の可能性も指摘されている▼ブロック塀倒壊で多くの犠牲者が出た40年前の宮城県沖地震など、過去の地震による倒壊被害の教訓から学ぶものは多い。いまだ生まれざる未来の世代にまなざしを向けて、なすべきことを実直に果たす。信頼のバトンリレーだろうか。

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