2016年06月07日付

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7年目に1度の御開帳でにぎわう駒ケ根市の古刹、光前寺を訪ねたときのこと。「光っている」と話しながら、年配夫妻が石垣の隙間に目を凝らしている。つられてのぞき込むと、外からの光を反射してヒカリゴケが輝いて見えた▼こけむした森や寺社に身を置くと心が落ち着くが、ヒカリゴケのように注意深く眺めることはまれではなかろうか。生物学的分類群で「蘚苔類」と呼ばれるコケ植物は日本だけでも1600種を超え、かなり奥深い世界らしい▼全国各地の名所を訪ね歩く“コケウオッチャー“も少なくないという。日本蘚苔類学会から「日本の貴重なコケの森」に認定されている北八ケ岳の白駒池一帯の群生地は、第一級の観察地だろう。八ケ岳全域では国内で確認された種類の4分の1が見られるそうだ▼筆者も何度か見に出かけたが、雨上がり直後のコケの森は鮮やかさを一段と増し、生き生きとしていた。ルーペを向けると表面に水が貯めこまれているようにも見えた。「苔いちめんに、霧がぽしゃぽしゃ降って」(宮沢賢治、ありときのこ)といった風情だった▼茅野市など近くの山荘関係者が「北八ケ岳苔の会」を結成し、こけむす景観を守る活動を繰り広げている。環境変化の影響を受けやすく、「植物の両生類」とも言われるコケ。「コケの森」を守ることは私たち自身の自然環境を守ることにつながる―。学会の呼び掛けである。

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