生命に学ぶ 豚飼育に挑んだ上農高生・上

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出荷用の運搬車両に黒豚を追い込み、ほっとした表情の生徒たち。台風の接近で出荷に立ち合えたのは3人だった=2018年10月1日

「私たちは初めて豚を飼育し、解体、加工をしました。わが校では30年ぶりと聞いて最初は不安でいっぱいでした」。まとめの3学期、課題研究発表会で酒井和馬さんはこう切り出した。

上伊那農業高校(南箕輪村)の生物科学科動物科学コースの3年生が今年度、校内で黒豚2頭を飼育した。同校が毎年11月に行う収穫祭では実習で収穫した食材を使って豚汁を作り、全校で味わうのが伝統だった。ところが、ここ30年、メイン食材になるはずの豚肉だけが校内で調達できなかった。課題研究を兼ね、5人が豚の飼育に取り組んだ理由の一つだった。

校長室に掲げられた「生命」の書。同校がスローガンに掲げる「生命に学ぶ」を実践した生徒たちの1年を追った。

■手探りで4カ月飼育 抱え上げた枝肉重く

「うわっ重っ」。と畜場から学校に返ってきたばかりの黒豚の枝肉を抱え上げた生徒が声を上げた。解体を体験したのは、出荷から2日後の10月3日のことだった。

子豚で仕入れたときの1頭の重さは30キロほどだった。4カ月飼育して出荷するときには、1頭は106.5キロ、もう1頭は118.5キロになっていた。

頭部や四肢端などが切り落とされ、皮や内臓が取り除かれて戻ってきた枝肉は、1頭分の重さが68キロと77.5キロ。フックにつり下げた肉の塊を見て、飼育した黒豚は家畜なんだと改めて感じたようだった。

学科改編で1988年度の入学生から畜産科が生物工学科(生物科学科の前身)となり、畜産専門の教育はバイテク教育に切り替わった。実習での豚の飼育もなくなった。それから30年。養豚技術はもはや白紙状態で、生徒らは飼料会社の専門家を招いて餌の与え方を教わり、手探りで育ててきた。

豚舎もなかった。生徒らは動物科学コースの仲間の協力を得て既存の牛舎の一部を改造。自分たちで養豚スペースを作った。購入した2頭の子豚を迎えたのは5月31日だった。

豚を課題研究のテーマにしたのは小野沢りんさん、酒井和馬さん、島谷蒼太さん、高橋真優さん、堀越永遠さんの5人。餌の違いによる成長の比較、超極小養豚農家の経営の可能性を考察するための収支計算などに手分けして取り組んだ。

年が明けた1月9日、解体保存してあった豚肉の骨抜きをし、脂をそいで部位に分けた。ハムやベーコンへの加工の準備もした。骨に沿って肉をそいでいく作業は骨格の理解がポイントになるようで、生徒たちは頭を出した骨を指さし、「この先がどうなっているのか、骨の軌道が分からない」と頭を抱えた。

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