50年前の両陛下の伊那谷訪問 桃澤さん手記

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当時のアルバムを振り返る桃澤匡行さん

天皇陛下が足を止めて見上げられたカシの木。「白カシですね」と声を掛けられたことが半世紀を経た今も脳裏に焼き付く。昭和の時代だったちょうど50年前の8月下旬。天皇、皇后両陛下が皇太子ご夫妻時代に伊那谷を訪問された。上伊那の最初の視察地は飯島町本郷の果樹園「桃澤晴香園」。父母と共に迎えた桃澤匡行さんは、天皇陛下が退位し平成が終わるこの時に半世紀前の記憶を手記にまとめた。当時を知る人が少なくなる中「伝えていくことも大切」と振り返る。

県天然記念物にも指定されるカシの木。樹齢200年以上に達するが、今も50年前と同じように緑の葉がまぶしく、その脇には「皇太子同妃殿下行啓」の碑が立つ。今月下旬、果樹の受粉作業を終えた匡行さんはいつものようにカシの木の下を通って自宅に戻り、両陛下訪問時の記録や写真をまとめたアルバムを眺めた。

「私も年を取ったし、昔のことなので忘れてしまったことも多いけれど」。笑顔で話すが、手記は両陛下の訪問が決まった時の母親の慌てた様子から克明に記されている。

1969(昭和44)年8月26日。ナシ作りの先駆者として有名だった匡行さんの父、匡勝さんが両陛下を自宅の果樹園へ案内した。匡行さんは滞在の進行状況を確認する役割を任されて同行。天皇陛下が一般論だけでなく、専門的な事柄についても父親に質問をされる風景を目にした。

「さまざまな場所を視察されるのに、一歩踏み込んだ知識を持たれていた。事前から大変なご苦労があったんだと思う」。

皇后さまは匡行さんの母、宏枝さんの勧めで予定になかった洋ナシの収穫を体験。もぎ取る様子は週刊誌などでも大きく報道された。「一歩も二歩も控えめで、仲むつまじい夫婦のお手本を見るような思いだった」。

時代は過ぎても両陛下の耳を傾ける真摯な姿勢が忘れられない。「これからどんな未来が来るか分からないが、令和は平和でいい世の中であってほしい」。匡行さんは平成の終わりにカシの木を見つめた。

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