2019年5月5日付

LINEで送る
Pocket

昭和20年代に小学校時代を過ごしたドイツ文学者の池内紀さんが、随筆「世の中にひとこと」の中の「運動会」と題する一文で、高学年種目の棒倒しや騎馬戦、組み体操の思い出を書いている。自分の体験と重ね合わせて楽しく読めた▼組み体操の見せ場となる演技「ピラミッド」は、体格や腕力の強さによって下段、中段、最上段と配置が決まる。バランスを崩さないためには、十人十色の力を結集することが肝要だ。〈クラスの誰もが、それぞれの特性に応じて役目を果たすようになっていた〉▼やり抜いた満足感を忘れえぬ思い出としてつづる池内さんも触れているが、学校の運動会も時代とともに様変わりしている。競技の危険性や安全対策が問題視されるようになり、近年の相次ぐけがの発生を受けて、全国的にはピラミッドを禁止した学校も出ている▼一方で、子どもの体力低下というまた別の課題もある。バランス感覚や柔軟性といった、体を動かすための基本が十分でない子が目につく―と指摘する識者もいる。「片足立ちができない」「かかとをつけてしゃがめない」など現場からは心配の声も上がっている▼「幼児期によく外遊びをしていた子どもほど、小学校に入ってからも体力がある」。スポーツ庁がこんな調査結果を発表している。時間と空間と一緒に楽しめる仲間をどう確保するか。外遊びをするための環境づくりも難しい時代だ。

おすすめ情報

PAGE TOP