2019年08月08日付

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「帰ってきたいな」。伊那市の春日城跡で20代ぐらいの女性2人が市街地を見下ろしていた。吹き上げてきた風が城跡を通り抜けていくとき、その風に乗ってそんな声が聞こえてきた▼この地域全体を言い表すのに都合がいい―ぐらいの理由で「伊那谷」をよく使っているが、ここから見える景色は平らで広く、谷のイメージはなかった。街の真ん中には天竜川。川面は見えなくても、堤防や橋、建物の並びがその位置を教えてくれた▼この街が二人の古里なんだろう。気心の知れた仲だからこそ、こぼれ出た本音だったのかもしれないが、ふっと言葉を発しさせる風景の力はすごい。「帰っておいでよ」。こういう場面で、誰かがそんな声を掛けてあげることができたなら、気持ちは古里へ一気に傾きそうだ▼古里就職を考えている上伊那地方出身の大学生らを対象とした就活準備合宿が、今年も始まる。地元企業の人事担当者らと学生が交流し、就職活動や今後の生き方に対する意識を高めていくための合宿で、学生たちは地元にある企業を知る機会にするそうだ▼今年で4年目。事務局によると、初年度の参加者の約4割が上伊那地方に就職したそうだ。就職先を県内全域に広げると、古里就職は8割になるという。合宿は学生たちの帰郷へのステップ。ならば帰ってきたいと考えている若者を全部受け入れることができる地域をつくらなければ、と思う。

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