考想・諏訪湖13、セイコーエプソン碓井社長

LINEで送る
Pocket

環境に配慮したものづくりへの思いを語る碓井社長

諏訪市大和の諏訪湖畔で創業したセイコーエプソン(1942年、前身の大和工業として)が手掛ける「省・小・精」の製品開発と事業展開には環境への負荷軽減を目指す精神が息づく。環境活動もフロンガスの全廃、世界各地での美化活動、植林など事業拡大と共に地球規模に広がった。「環境配慮への強い意志で未来を切り開く」。その原点は「地域の財産である諏訪湖を汚さないこと」から始まった。

諏訪湖に対する取り組みとして最初に取り組んだのが排水処理。公害が社会問題化した70年代には、法令の規制値を上回る自主基準で汚染防止に取り組んだ。事業のグローバル化が進んでも「自然を敬う」企業風土は変わらず、88年にはオゾン層破壊物質であるフロンの全廃に取り組み、92年には米環境保護庁から「成層圏オゾン層保護賞(企業賞)」を受賞(以降6年連続で企業賞・個人賞)した。

碓井稔社長(64)が信州精器(現セイコーエプソン)に入社したのは79年。腕時計の会社という認識だったが、求人情報を頼りに企業を訪れ、コンピューターやプリンターなどの分野で新たな成長を目指そうとする気概を持った会社の雰囲気に魅力を感じた。

入社後は諏訪地方にも住んだ。当時の冬の諏訪の寒さは印象深く、「毎年のように諏訪湖が結氷し、御神渡りができていた」と懐かしがる。近年は御神渡りが出現する方が珍しい。「諏訪湖の冬を見るだけでも地球温暖化を感じさせられる。環境問題に取り組まなければという意識が自然に高まるのも諏訪の特徴」と話す。

同社のコア技術「マイクロピエゾテクノロジー」は当時技術者だった碓井社長が中心となって研究を重ねた。電圧を加えることで収縮するピエゾ素子の力でインクを吐出させる技術は現在、あらゆる同社製のインクジェットプリンターに搭載されている。熱を使わず、消耗も少なく、インクの量を正確に制御できる。熱を使わないため、インクの変質やプリントヘッドの劣化を抑え、高画質と耐久性の高さを実現した。レーザー方式などに比べ、廃棄物も少ない。

プリンターを安価で販売し、カートリッジで利益を出すインクビジネスから舵を切り、大容量タンクモデルを導入したのも早かった。消耗品の交換頻度を抑えることは省資源化と物流に掛かる環境負荷を減らす。オフィス内製紙機「ペーパーラボ」は、A4の紙を1枚作るのにコップ1杯分が必要とされる水をほとんど使わない。古紙回収、紙の購入、運搬で排出される二酸化炭素の排出量も減らせる。環境への配慮を訴えても直接売り上げに結び付かない時代もあったが、環境問題に対する姿勢にはこだわり続けた。

異常気象が常態化し、地球環境の急速な変化が如実に表れるようになった近年、持続可能な社会に資する商品に価値を求める考え方は世界的に広まっている。同社長は「当社が目指す製品開発の方向性と社会の価値観が合ってきている」とみる。

本社から見える西日が反射して湖面がキラキラと輝く諏訪湖が好きという同社長。「どんなに事業のグローバル化が進んでも、創業以来培ってきた理念の下に集まった人が知恵を出し、革新的な製品、価値を創造していくのが会社の基本。諏訪から世界を変え、新しい社会をつくる志を持ち続けていきたい」と言葉に力を込めた。

おすすめ情報

PAGE TOP