いらない命はない 稲川淳二さんが講演

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障がいを持って産まれた次男への思いを語った稲川さん

諏訪市医師会(小松郁俊会長)は16日、タレントの稲川淳二さんを講師に招いた市在宅医療講演会を同市湖岸通りのホテル浜の湯で開いた。頭の骨に変形がある先天性の重い病気を持って産まれた次男について語り「世の中にいらない命はないと教えてもらった」と述懐した。障がい者の子を持つ親の葛藤を包み隠さず吐露し「次男に死んでくれないかと思った」と告白。参加した約340人が涙を拭いながら耳を傾けた。

タレントとしてテレビに引っ張りだこだった稲川さんは妻からの電話で次男の病気を知った。医師から「この子(次男)は手術が必要。手術しても死ぬか成功しても障がい者として生きることになる」と伝えられたという。「頭の中が真っ白になった」。次男の将来や障がいを持つ子を育てる自らの生活に絶望し「(次男は)死んでくれないかなという気持ちがあった。本当に最低な親」と語気を強めた。

生後4カ月で命をつなぐために必要な手術を受けることになった次男。手術前、病室で偶然二人きりになった稲川さんの心に「鼻と口を押えたらこの子は死ぬ。妻と長男と3人の平穏な日常に戻る」という思いが浮かんだ。「今なら殺せる。今しかない」。衝動的に小さな顔まであと1センチのところまで手が伸びた。しかし、「やめておけ。絶対にやめておけ」という声がどこからか聞こえ、手が震えて動かせないでいたところ、妻が病室に戻ってきたという。

12時間に及ぶ大手術は成功し、全身を包帯にまかれ、無数の管につながれた状態で手術室を出てきた次男はひどく荒い息をしていた。小さな体で闘い続けていた息子を見た稲川さんは自らを責め、たまらなくなって「由輝、俺はお前の父ちゃんだぞ」と初めて次男の名前を口にし、叫び続けたという。

この経験がきっかけとなり、テレビのお笑いの仕事から、障がい者支援の活動へと生き方が変わっていく。「由輝に教えてもらったことがある。世の中にいらない命なんてないんだ」と結んだ。
 壮絶な経験と苦しかった胸の内を絞り出す稲川さんの話に鼻をすする音が会場のあちらこちらから聞こえた。

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