2020年4月29日付

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「笑顔は人をつなぎ、元気にする。人生を開く」。父親が生前によく語った言葉だ。いつでも頭の中にあり、苦境においては一歩前へ踏み出す原動力になっている▼二十数年前の記者デビューを思い出す。入社翌日、木曽で老夫婦が始めた100円均一店の取材現場に放り出された。右も左も分からず、商品情報の聞き直しと写真の撮り直しで3度も通う羽目に。怒髪天の対応を覚悟したが、店主は優しく笑った▼記事の掲載後、謝意を示しつつ笑顔の理由を尋ねると「君がにこにこしているのを見ていたら、自然とね。一生懸命な人をどうして怒るんだい」と店主。「俺たちも元気をもらった。いつでもおいで」と再び破顔した。感涙にむせぶ帰路で父親の言葉がよみがえり、笑って生きようと心に誓ったものだ▼落語と漫才を鑑賞したがん患者の免疫力が向上した―とする大阪国際がんセンターの研究結果に目を奪われた。生命の根本部分に、笑顔や笑いが深く関係するという。臨床応用に時間を要するとしても、底知れぬ期待感を抱かずにいられない▼新型コロナウイルス感染拡大の中、多くの人がマスクを着け、表情は曇りがち。ただ口元は隠れても、目尻を下げれば好意的な感情が伝わり、つながりも実感できるだろう。無理に表情をつくらなくてもいいけれど、相手を思いやり自然に浮かべる笑顔のパワーを信じたい。笑顔はきっと、人生を開く。

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