はなれてつながる1 顔が見える安心感

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画面越しに家族が映った瞬間、とみ子さんの口から大きな声が施設内に響いた。「私は元気だよ」。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、外出の自粛、人との接触の抑制が求められている。一方で会う機会の減少で関係性が疎遠になる懸念も。それでも地域では電話やテレビ会議アプリなどを活用してつながりを維持しようとする動きが数多くある。大切なのは「接触は離れるが、つながりは維持する、強くする」。会うのが難しかった仲間、家族、信頼を寄せる人と画面越しなどで顔を合わせた瞬間、再会を喜ぶ笑顔があり、安堵の表情があった。

介護老人福祉施設さわらび(岡谷市西山)に入所する小原とみ子さん(94)は、パソコンの画面の前で家族と久し振りに会える瞬間を今か今かと楽しみにしていた。設定の関係でなかなか切り替わらない画面を黙ってじっと見つめていたが、準備が整い、回線がつながった瞬間、大きな声で言った。「私は元気だよ。元気でやってるからね」。

画面越しではあるが、家族と会えたのは約2カ月ぶり。その喜びようは表情の変化から職員にも十分周囲に伝わった。「おばあちゃん元気?」、「うちの畑にネギを植えただよ」、「また会いに行くからね」、「ご飯を食べて健康には気を付けて」、「施設の人とも仲良くするんだよ」。子、孫、嫁と集まった家族がかわるがわる映り、とみ子さんに声を掛ける。とみ子さんもうれしそうに「元気だよ」「ありがとね」と応じる。オンラインでの面談を終えたとみ子さんは「みんなの顔が見られて良かったよ」とにこやかな表情で部屋に戻っていった。

とみ子さんと約2カ月ぶりに話した小原美保さん(72)=岡谷市成田町=は「元気な姿を見られてほっとした。元気でいるとは思っていたけど、顔が見られる安心感は大きい」と喜んでいた。

さわらびでは、施設内感染を防ぐため、入所者の家族との面会を2月21日に禁止した。入所者に新型コロナウイルスが発症すると、集団感染につながり、介護崩壊が起きかねないからだ。家族のやりとりは電話や手紙などに限られた。

面会を禁止にする前、中には毎日のように施設に通う家族もいた。早出徳一施設長は「感染予防とはいえ、面会禁止は入所者はもちろん、家族にとっても寂しいこと。会わせられない心苦しさはずっと感じていた」と話す。

さわらびを含め中南信地域で福祉施設を運営する平成会(塩尻市)は同所を含め岡谷、松本など複数の施設でテレビ電話アプリを活用して入所者と家族が画面越しに会話できる環境を整えた。家族側の設定準備の関係で全員が利用しているわけではないが、これまでのところ利用者からは好評で対象施設を順次広げていく方針だ。

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