コロナ禍 国際支援に影

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、フィリピンで進める予定だったプロジェクトが中止となった佐藤利春さん

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、途上国支援の停滞を招いている。感染者の流入を防ぐために各国が出入国管理を強化し、国境を越えた人の移動を制限しているからだ。上伊那地方の関係者では、国際農業者交流協会(本部・東京)職員の佐藤利春さん(58)=飯島町田切=が、フィリピンで農産物の流通改善プロジェクトを手掛ける予定だったものの、取りやめとなった。

「例外なく、外国人の入国を全面的に禁止する」

3月19日。フィリピンのロクシン外相が発表した方針に佐藤さんは言葉を失った。渡航を目前に控えたタイミング。飯島町の知人たちが、激励の思いを込めた送別会を開いてくれた後だった。

佐藤さんは国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアOB。スリランカで食品加工の技術供与に取り組むなど、アジアの国々の発展に携わってきた経験を持つ。

フィリピンには今春から3年間、日本の政府開発援助(ODA)で駐在することになっていた。活動の舞台は首都マニラから車で6時間ほど離れたベンゲット州。高原で栽培される野菜の品質が高いと評判の地域だ。

佐藤さんがプロジェクトで目指したのは、州内産の新鮮な野菜をフィリピン全土の食卓に届ける流通システムの整備。「収穫直後のレタスを芯まで凍らせ、長時間にわたって鮮度を保つ」―。長野県内で実績のある冷凍技術を生かす好機だった。「軌道に乗れば生産性が上がり、農家の所得も増える」。そう期待に胸を膨らませていた。

だが、今年に入って状況は一変する。新型コロナが世界各地で猛威を振るい始めたのだ。

感染爆発、都市封鎖、医療崩壊…。危機の拡大はとどまるところを知らず、世界保健機関(WHO)は3月11日、「パンデミック(世界的な大流行)」の状態にあると宣言した。そして、ロクシン外相の発表へとつながる。佐藤さんは日本からの出国を断念せざるを得なくなった。

米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、日本時間17日午後5時30分現在、フィリピンの新型コロナの感染者数はおよそ1万2500人、死者数は800人以上。日本政府は4月24日、フィリピンの感染症危険情報を4段階で2番目に高い「レベル3」(渡航中止勧告)に引き上げた。佐藤さんは現在、改めてプロジェクトの準備を進めているが、海の向こうへ飛び立てる日がいつ来るのか、見通しは立たない。

それでも、めげずに前を向き、こう語る。「国際協力とは、信頼で世界をつなぐこと。日本とフィリピンの懸け橋となれるよう、長野県の代表として頑張りたい」。絶やさない笑顔の奥に、ほとばしる情熱が見えた。

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