中アでライチョウ繁殖を 野生復帰事業開始

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中央アルプスのライチョウの「野生復帰」事業で使われる有精卵

環境省は5日、国の特別天然記念物で絶滅危惧種のニホンライチョウを中央アルプスで繁殖させるため、中ア駒ケ岳(2956メートル)周辺に唯一生息しているとみられる雌1羽に動物園などが飼育する個体が産んだ有精卵を抱卵させ、ふ化を目指す初の「野生復帰」事業をスタートさせた。中村浩志・信州大名誉教授(鳥類生態学)らが同日、中ア山麓の駒ケ根高原(駒ケ根市)で記者会見し、事業に用いる有精卵を披露。その後、駒ケ岳近くの山小屋まで移送した。

有精卵は、飼育されているライチョウが5月下旬から6月初めにかけて産んだ計8個。大町山岳博物館(大町市)や上野動物園(東京)など国内の4施設が提供し、4日までにすべて駒ケ根高原に運ばれた。

今後の計画では、まず雌の巣を見つけ出す。雌は卵を産み終えると抱卵に入って巣にいる時間が長くなるが、1日数回、餌を食べるために巣を離れる。その隙を狙い、運び込んだ有精卵を雌が産んだ無精卵と取り替える手はずだ。中村名誉教授によると、抱卵してからふ化するまでに23日ほどかかり、7月上旬にもひなが誕生する見通しだという。

環境省は昨年、北アルプス乗鞍岳(長野・岐阜県境、3026メートル)に生息するライチョウが産んだ有精卵を中アに運び、ひな5羽が生まれたが、間もなく全滅した。テンなどの天敵による捕食や悪天候が原因と考えられるため、今年はひなをケージ(籠)に入れて保護する方針だ。

中村名誉教授は「今回の事業は日本における希少野生動物の増殖の一例として、非常に大きな意義がある」と強調。卵を提供した施設に感謝の意を示すとともに「事業を必ず成功させたい」と抱負を語った。

中アのライチョウは半世紀ほど前に絶滅したとされてきたが、2018年夏、他の生息地から飛来したと推定される雌1羽が確認された。環境省は乗鞍岳で生まれた3家族約20羽を7月下旬をめどに中アに運び、「移住」を試みることも決めている。

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