2020年6月10日付

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辰野町の松尾峡(ほたる童謡公園)で、ゲンジボタルの乱舞を眺めるときの感動は格別だ。宵やみに浮かぶ無数の光跡が、見る者を幻想的な世界へ誘う。町の代名詞ともいうべき魅力あふれる自然資源である。ただ今夏は誰も観賞できない▼新型コロナウイルス感染防止のため、信州辰野ほたる祭りが中止となった。町や商工観光団体でつくる実行委員会は蛍発生期間の6月中、松尾峡を全面閉鎖し協力を呼び掛ける。例年10万人超の観光客を集める一大イベント。決断を下した関係者の心痛は察して余りある▼祭りは戦後の復興を挟んで71回の歴史を重ね、地元に深く根を張った。今では官民協働による蛍の保護育成活動やイベント企画が進み、小学生は幼虫がえさとするカワニナの養殖に励む。住民参加のまちづくりの精神が伝統的に体現されてきた▼住民有志が13日まで、手作り照明アート「竹あかり」を無料配布している。例年のように祭り会場には飾れないけれど、各家庭で来年の祭りへつなぐ希望の光をともそう―という試み。ここにも脈々と受け継がれるまちづくりへの情熱が息づいている▼竹あかりの製作現場でメンバーの男性が言った。「これはコロナに負けないぞという意思表示。下を向かず、多くの人と思いを共有したい」。力強い笑顔が地域の未来を明るく照らす。来年6月の祭りでは、きっと素晴らしい光の舞いと再会できるだろう。

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