2020年9月27日付

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今月、親戚の家を訪れ、稲刈りを手伝った。山あいの限られた土地を区切って連なる小さな田んぼ。稲刈りといってもすでに刈られ束ねられた稲を「はざ」に掛けていく作業で、集まったいとこの家族たちと雑談を交わしながら気持ちよく汗を流した▼稲を持ち上げると、足元からトノサマガエルが飛び出した。その大きさや背中の模様、力強い跳躍に懐かしさを覚え、思わず作業の手を止めて追い掛け、久し振りに田んぼの中を走り回った▼カエルの代表格とされ、かつては身近な存在だったトノサマガエル。いつしか姿を見なくなったと感じていたが、ついに2015年、絶滅危惧種として県版レッドリストに追加された▼東京大学院農学生命科学研究科の宮下直教授=飯田市出身=は7月に講師を務めた飯島町の講座で、水生昆虫を身近に観察できるのは湿地帯の環境ができる稲作の恩恵とする一方、ネオニコチノイド系農薬の普及や水田の水を切る「中干し」の時期が早まるなど、農業の近代化が生物多様性を脅かしている現状を指摘した▼講座では町内のビオトープで採取したタガメやゲンゴロウ、ミズカマキリなども水槽で紹介されていた。いずれもトノサマガエル同様、子どものころ以来の再会だった。世界的にも40%の昆虫種が減少し、数十年で絶滅の可能性を示す研究もある。豊かだと思っている身近の自然も、さまざまな課題を抱えている。

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