2020年10月18日付

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新しい勤務地では最初に市町村史(誌)を読む。ぱらぱらとページをめくり、気になった記述に付せんを貼っていく。原始、古代、中世、近世、近現代、民俗と目を通し、その土地の成り立ちや人々の営みをたどってみる▼諏訪市史上巻(1995年)の冒頭にある「諏訪史学史」は貴重な記録だ。郷土の歴史を明らかにしようとした在野の研究者たちとその系譜、思想統制から解放されて戦後に活発化した市町村史編さん、学術的な成果と課題が約40ページにわたってつづられている▼執筆者は近世史・近現代史・民俗が故浅川清栄さん、古代・中世史が故宮坂光昭さん、考古学史が高見俊樹さん。巻頭掲載は浅川さんと宮坂さんが望んだという。高見さんは「諏訪地域は日本の学問上の研究対象となり、数多くの研究者を輩出した特別な地域。リスペクトがあったと思う」と述懐する▼諏訪市ではきょう高島城復興50周年記念事業が始まる。天守閣での企画展、記念誌の販売など、地域研究の上に成り立っている事業の多さに驚く。企画展では歴史に埋もれた復興運動の功労者にも光を当てた。地域研究の伝統は今も受け継がれている▼「新しい『諏訪史』を編さんし、新しい研究の出発点とする」。諏訪史学史は諏訪地域全体の地方史研究を提唱した。研究者たちが費やした膨大な時間と情熱を思う時、新天地への不安はいつの間にか雲散霧消している。

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