2020年12月1日付

LINEで送る
Pocket

「ありがとう」。仕事でも私生活でも、掛けてもらってこれ以上にうれしい言葉はないだろう。人の距離感をぐっと縮め、心を開く魔法のような響きである。聞いた相手も前向きな気持ちになってくれたらと、毎日声に出して言うことに決めている▼学生時代をともに過ごした仲間たちは、筆者以外すべて関西出身で、頻繁に「ありがとう」を口にした。講義ノートの貸し借りや悩みの相談をした時はもちろん、別れ際もくだんの言葉で締めくくる。気付けば朝から晩まで、周りが感謝の思いであふれていた▼彼らは飲食店でも、配膳や会計などの接客をする店員に向け先んじて礼を言った。理由を尋ねると「うまいもん食べさせてもらって、いいサービスしてくれたからね。難しく考えたことないわ」。自然体で偉ぶらない心のありように、地域文化の相違と片付けようとしていた自分を恥じたものだ▼決意と表現するには淡いものだったけれど、二十歳の遅まきながら感謝を尊ぶ心を強くした。相手から言われる前に、自らすすんで「ありがとう」と伝える姿勢こそが大切なのだと。仲間たちが示した至極当然の習慣が、現在まで続く人生の教示となった▼コロナ禍を恐れ、振り回されているうちに師走を迎えた。慌ただしさが増せば不安も付きまとう。そんな時こそ感謝の言葉を声に出したい。きっと、固まった心を砕くような笑顔で年の瀬を過ごせる。

おすすめ情報

PAGE TOP